大空間構造物の解析と設計手法の研究開発
大空間骨組構造物が過大荷重を受けて崩壊に至る過程を追跡し耐荷性能を予測するための崩壊解析法,地震,風などの動的外乱を受ける場合の応答解析法などについて研究を行っている。 さらに,その応用として,解体と再利用を考えた単層空間骨組の接合システムと耐荷性能に関する研究,大空間骨組構造の免震化と耐震・耐風性能に関する研究などを行っている。
大空間建築物の構造設計法

性能規定型設計法とは,建築物の重要度や荷重のレベルに応じて建築物に要求される耐荷性能(被害レベル)を指定し,その性能を実現するように建築物を設計しようとするものである。 本研究では,性能規定型設計法に対応した大空間建築物の構造設計法を確立するための研究の一環として,単層ラチスドームの耐雪・耐風・耐震設計法と免震化の可能性について,コンピュータ解析および振動実験による研究を行う。
超大型浮体式海洋構造物の波浪応答

超大型浮体式海洋構造物とは海上空港や海上都市など,海洋空間利用を目的とした平面的な広がりが数 km に及ぶ大規模浮体式構造物をいう。 超大型浮体式海洋構造物モデル「メガフロート」の洋上実証実験が神奈川県横須賀市沖で実施され,その実現性に大きな期待がかけられている。 本研究では,超大型浮体式海洋構造物を実現するための研究の一環として,波浪応答を予測・制御する手法について,コンピュータ解析および造波水槽実験による研究を行う。

張力構造システムの開発と解析
膜構造,ケーブル構造,テンセグリティ構造等に代表される張力構造は美しい曲面や変化に富んだ形状を持ち,人々に魅力を与えている。張力構造は構成された部材の軸力で外乱に抵抗するため,より少ない材料を用いて大空間構造物を構成することができる。 ケーブルと膜材料は引張材として張力構造によく使われている。 これらを構造材として使用する場合,適当な初期張力を導入し剛性を付与することが必要である。 そのため,張力導入できる形状を求める解析及び導入できる張力を求める解析はケーブル構造や膜構造などの張力安定構造を設計する時不可欠な部分になる。 この 2 つの解析は形状解析及び張力導入解析と呼ばれている。 張力構造は自重が軽い一方,剛性も低いので,雪荷重や風荷重による変位が大きく,ケーブルのたるみや膜のしわを考慮した上での非線形解析が必要となる。 張力構造システムの外力抵抗メカニズムをその他の構造形式に応用することもできる。 いわゆるハイブリッド構造である。 例えば,テンセグリックシステムを単層トラスドームに適用することによって安定性に優れるかつ境界構造に負担を低減できるサスペンドームを構成できる。 異なる形式の構造システムを合理的に組み合わせることによって新しい可能性を期待できる。
張力構造の新しい構造解析手法の開発

シドニーオリンピックの競技場サイトはテンションストラクチュアのオンパレードだった。 こうしたケーブルや膜により造られるテンションストラクチュアは,美しい建築形態とは裏腹に,張力が導入されて初めて構造物として外力に抵抗する特殊な構造。 普通の構造解析法が通用しない構造なのだ。 世界を見渡しても,ケーブル構造物や膜構造物の設計が Buro Happold や Ove Arup といった高い技術を持つ一部の限られた設計集団によってなされている理由がここにある。 この研究では,膜やケーブルに対してこれまでに当研究室で個別に開発してきたテンションストラクチュアの構造解析用プログラムを,汎用的なプログラムとして統合整理し,テンションストラクチュアの解析を簡易に行うことのできる統合システムを構築することを目指す。
膜構造物の簡易張力測定装置の開発

近年,数多く設計されるようになった膜構造物の最大の弱点は張力の維持管理に神経を使うこと。 施工の初期張力導入の段階では,膜の巻き取り器具などの反力により,ある程度把握することができるが,竣工後はこれを定量的につかむことが非常に困難。 ところが強風によるばたつき(フラタリング)や雨水の局部的滞留(ポンディング)は膜の破断につながる致命傷に。 竣工後に膜構造物に生じている膜張力の大きさを知ることは,維持管理の観点から大変重要であり,これを可能とする技術に大きな期待が寄せられている。 当研究室では音源加振法を新たに提案(発明特許出願中)。 この方法によれば,膜面に生じる直交 2 方向の張力をそれぞれ別々に特定できる可能性が大で,これが実現できれば世界初の技術となる。 ここでは,このアイディアに基づいた測定装置実機の製作を目指した研究開発を行う。

建築の構造計画・構造デザイン
建築の構造デザインとは,現実の設計条件のもとに意匠,構造,設備にかかわる多くの物理的要素の形態及び関係を調整し決定することにより,安全で美しく快適な空間を創造することである。 なかでも構造解析に先行してなされる構造計画は最も総合性が要求される分野であり,これまでの客観的な工学を背景にした安全性,経済性を対象とする構造合理性と,これからの環境創生において益々重要となる快適性や造形美を対象とする感性の融合を目指した,新しい構造計画・構造デザイン手法の構築を学際的,実践的立場から試みている。
ハイブリッド空間構造の可能性

ハイブリッドな空間構造として,テンション材と組み合わせた複合構造による軽快で透明感のある空間構造が考えられる。 テンション材で座屈補剛された柱から出発し,その原理をアーチやドームのハイブリッド構造へと展開する。 補剛材としてのテンション材は,ケーブルやカーボンファイバ,主要構造部の線材・面材はスティールやアルミまたは木造など多様な組合せが予想され,それら複合構造物の構造特性に関する理論的,実験的研究をはじめたような複合システムの可能性について基礎的研究を行う。
自由曲面の構造デザイン

21 世紀を迎えた今日では,私たちの形態に対する感性・嗜好が静から動へ,安定から不安定へ,単純から複雑へ,完結から開放へ,定形から柔らかな不定形へとフォーマルなものからよりインフォーマルなものへと大きく変貌しようとしており,さらにはその実現する可能な時代になってきている。 このような時代に適応した新たな空間構造として自由曲面シェルが考えられる。 自由曲面の形態デザインと力学特性に関する基礎的研究を行うことで,その実現への足がかりとする。

構造形態創生の理論と応用
これからは構造を理解しないアーキテクトはもちろん,アートを理解しないエンジニアも建築で生き残ることは難しい。 その意味で,構造デザインの持つ重要性はますます大きくなるに違いない。 構造デザインの本質は空間の論理的な創造である。 従来の設計では,システムの基本設計は設計者が経験や勘により行い,その後,その構造システムの安全性を検討するために構造解析を行う。 つまり,構造解析の技術は構造システムが既知となったときに初めて,しかも単に安全チェックの道具として用いられるだけである。 では,設計外力や形態制限などの設計条件が与えられた時,直接かつ理論的に構造システムを提案することはできないだろうか ? 構造解析の技術を構造デザインのための道具として積極的に利用するのだ。 研究課題は,このような考え方に基づいて,コンピュータ構造デザイン法 (Computational Morphogenesis) の構築を目指すものである。
遺伝的アルゴリズムによる構造デザイン

1990 年頃までの構造最適化法は,構造物の断面積や構造形状だけを対象とされてきており,構造物のトポロジー(位相 : かたち,組み方)を扱うことには全く無力。 ところが,1985 年頃にミシガン大学で提案された遺伝的アルゴリズム (Genetic Algorithm, GA) は,組み合わせ最適化問題を解くための群を抜く優れた手法。 例えば,「巡回セールスマン」や「N- クィーン」,「ナップサック」などの有名な組み合わせ最適化問題への適用能力はパソコンで簡単に示すことができる。 ここでは,この GA をスペースフレームやスペーストラスの「組み方」や「空間配置」の決定問題に利用する。
進化論的構造最適化法による構造デザイン

GA で取り扱うのは基本的にトラスやスペースフレームなどの骨組構造物を対象としたもの。 骨組だけでなくさらに一般的な板やシェルあるいは 3 次元連続体で構成される構造の形態創生法もあっていい。 その 1 つが進化論的構造最適化 (Evolutionary Structural Optimization, ESO) 法 。 これは Darwin の進化論による生物進化のアナロジーに基づいた新しいアプローチで,既に定評のある強力な構造形態創生法。 空間から構造物を彫刻のように「くり抜いて」創り出す。